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このあとも、0さんといくつかのやりとりがありましたが、とにかくジャックの話を聞き、慰留に努めるということになりました。
0さんには、失礼にあたるので言えませんでしたが、私がほんとうに言いたかったのは、次のようなことです。 この会社に魅力がないままだと、同じことの繰り返しになってしまいます。
つまり、おカネの問題ではなく、この会社に彼をつなぎ止めるだけの魅力があるかどうかという問題なんですよ。 アメリカ人だって会社に求めるものは「やりがい」と「働きがい」もちろん、おカネは大事です。

社員にとって、給与が高いことに越したことはありません。 ですが、おカネだけに重きを置いた経営を続けていると、意識的にであれ意識外であれ、そのような経営に沿った人事制度を採ることになり、社員は常におカネと引き替えにしか仕事をしないカルチャーをつくってしまうでしょう。
そのような会社には「おカネさえたくさんもらえれば」という人しか集まらなくなり、働きがい(自分の能力発揮とそれが報われること)を求める優秀な人材は、確保が難しくなります。 たとえ確保できても長続きしません。
すると、経営者や人事部長は、決まって「アメリカ人は(または、今の若い連中は)、何につけてもカネカネとうるさい。 彼らはおカネでしか動かない」とおっしゃるんです。
ですが、そういうカルチャー(おカネ以外の魅力がない会社)を自分たちがつくってしまったことに気づいていないのです。 先の0社のジャックと話してみて、彼のケースもまた、私か何十回となく経験した事例と同じだということがわかりました。
彼が話してくれたのは次のようなことです。 「会社の考えていることが、よくわからないんだよ。
ある機能をもった新製品を開発しろといわれ、必要な機材も与えられてはいるけれど、あとは任せっきりで、その開発に向けて互いに議論しようという姿勢や熱意が感じられないんだ。 研究の進捗に関するフィードバック?そんなもの、してもらったことないよ。
新しいアイデアや方法論がひらめき、自分では『やったぜ!・』と思って報告に行っても、『いつそれがものになるのか』と質問されるだけで、ともに喜んでもくれないし、その研究の方向性を一緒に考えてもくれないしね。 僕は何のために研究しているのか、わからなくなってしまったよ」ジャックにはもちろん5万ドルの給与アップの話もしましたが、「こんな気持ちで働き続けたくない」といって、結局彼は0社を辞めていきました。
ありきたりの言葉のように聞こえるかもしれませんが、彼が会社に求めたのは、おカネではなく「やりがい」「働きがい」だったのです。

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